肥満・メタボの食事療法：５つのステップについて説明します。今回はステップ③良い脂肪を食べ・悪い脂肪を減らす、ステップ④超加工食品を減らす、について説明します。
肥満・メタボを治療するためには、高インスリン血症とインスリン抵抗性を改善させることが必要です。５つのステップは、主に高インスリン血症の改善、つまり、インスリンの出過ぎを防ぐ食事療法です。
③良い脂肪を食べ、悪い脂肪を減らす
3つ目のステップは良い脂肪を食べ、悪い脂肪を減らす、です。
脂肪は身体にとって非常に大事です。脂肪はエネルギー源となるだけなく、細胞を覆っている細胞膜や、ホルモンの合成にも利用されます。脂肪は人間にとって欠かせない栄養素です。しかし、現代人は悪い脂肪を食べる量が多く、良い脂肪を食べる量が少ない状態です。
良い脂肪と悪い脂肪
カラダに良い脂肪
ω（オメガ）3脂肪酸： EPA、DHA、えごま油、亜麻仁油
ω9脂肪酸：オリーブオイル、ナッツ、アボカド
飽和脂肪酸：
植物性（パームオイル、ココナッツオイル）
動物性（バター、乳製品、牛脂、ラード）
カラダに悪い脂肪
ω6脂肪酸：
植物油、コーン油、大豆油、紅花油（サフラワーオイル）、
ひまわり油、菜種油（キャノーラオイル）など
トランス脂肪酸（硬化油）：マーガリン、ショートニングなど
過酸化油脂：酸化した油脂、使い回しの油脂など
こでは飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸、不飽和多価脂肪酸などの説明はしませんが、ざっくり飽和脂肪酸、ω（オメガ）3脂肪酸、ω6脂肪酸、ω9脂肪酸、トランス脂肪酸。過酸化油脂という名前を知っていただければよいと思います。
悪い脂肪を減らす方法
悪い脂肪に、ω6脂肪酸とトランス脂肪酸を上げました。ω6脂肪酸は一般的には植物油、サラダオイルと呼ばれるものです。植物性だから、サラダという名前がついているから、カラダにいいというわけではありません。むしろω6脂肪酸は炎症油とも言われます。圧縮、溶媒抽出、精製、精錬、漂白、脱臭という化学的な工程を経て大量生産され、価格が安いのが特徴です。加工食品や惣菜、ファストフードには必ずと言っていいほど、植物性油脂が使われており、自然とω6脂肪酸の量が多くなってしまうわけです。脂質を選ぶ場合には、コールドプレス製法（低温圧搾製法）と言われる低温、圧力のみで抽出された商品を選択するのがよいと思います。
植物油やサラダオイルを固形にしたものが、トランス脂肪酸です。人工的に作り上げられたトランス脂肪酸は、悪玉コレステロールを上昇、善玉コレステロールを減少させ、心血管疾患のリスクを上昇させることが報告されています。マーガリンやショートニングがトランス脂肪酸の代表例です。絶対に避けた方がいいでしょう。
④超加工食品を減らす
４つめのステップは超加工食品を減らす、です。
アメリカ糖尿病学会から発表されている超加工食品の定義は次の通りです。
『糖分や塩分、、脂肪を多く含む加工済みの食品。添加糖・硬化油・香味料・乳化剤・保存料などの添加物を加え、工業的な過程を経て作られ、常温で保存できたり、日持ちを長くしてある食品』
言葉ではなかなかわかりづらいと思います。実際には次にように質問してみましょう。
『100歳のおじいちゃん、おばあちゃんが子供の頃に食べていたか？』
- ポテトチップは食べていたか？ → 食べていない。ポテトチップは超加工食品。
- ジュースを飲んでいたか？ → 飲んでいない。ジュースは超加工食品。
- 菓子パンを食べていたか？ → 食べていない。菓子パンは超加工食品。
- マックを食べていたか？ → 食べていない。マックは超加工食品
また、超加工食品がどのような特徴を持っているかも知っておくべきです。超加工食品は上述の定義の通り、糖と脂肪と塩分が絶妙なバランスで製造されます。人類の叡智を尽くして作られた食べ物であり、食べるとドーパミンがたくさん出て、脳が興奮します。非常に中毒性が高い食べ物です。しかも、食べやすさや、香り、舌触りのためにほとんどの食物繊維が取り除かれており、満腹になりにくくできています。中毒性が高く、満腹になりにくい。つまり、超加工食品はやめられない、とまらない食べ物なのです。
なぜ超加工食品を減らすべきなのか。上述したように、超加工食品は中毒性が高く、やめられない、とまらない食べ物だから、というのも1つの理由です。一番大事な理由は、超加工食品を減らすことが肥満・メタボの原因である高インスリン血症の改善に直結するからです。超加工食品はここまで説明してきた３つの悪い要素を含む食品であることがほとんどです。つまり、超加工食品は、①糖が添加されている、②精製された炭水化物が使用されている、③カラダに悪い脂肪を含んでいます。超加工食品を減らすと、インスリンの分泌量を減らすことができ、カラダに悪い脂肪を減らすことができるのです。
