論文読んでみた 

ファスティングすると基礎代謝が減る?

 こんにちは。ドクレイです。ファスティングすると代謝が落ちる、そのような言葉を時々聞きます。今回は、ファスティングをすると基礎代謝がどのように変化するのか?そんな疑問に答えた論文を論文を2本読んでみます。まずは、結論です。

「ファスティングしても代謝量は変化しない!」

「ファイティングをすると、むしろ代謝量が増える可能性がある!」

 これですね。もっと詳しく知りたいという方は、下記のリンクより、論文の本文をお読みください。では、論文の紹介、解説などをさせていただきます。

論文の紹介

:Resting energy expenditure in short-term starvation is increased as a result of an increase in serum norepinephrine

ジャーナル:Am J Clin Nutr 発表年:2000

URL(PubMed):https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10837292/

:Alternate-day fasting in nonobese subjects: effects on body weight, body composition, and energy metabolism

ジャーナル:Am J Clin Nutr

発表年:2005

URL(PubMed):https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15640462/

84時間のファスティングで安静時代謝量はどうなった?

①Resting energy expenditure in short-term starvation is increased as a result of an increase in serum norepinephrine

 平均BMI22.5、平均年齢28歳、11人(男性4人、女性7人)の病気のない健康な人を対象に実験を行いました。84時間(4日間)にわたるファスティングを行い、ファスティング12時間後、36時間後、60時間後、84時間後で安静時代謝量を測定しました。

 まずは、安静時代謝量がファスティングでどのように変化するのかを見ます。ファスティングを開始して12時間後を基準として、ファスティング36時間後、60時間後、84時間後で代謝量を測定しました。図1の結果のように、36時間後、60時間後、84時間後のいずれも安静時代謝量は増加した、という結果になりました。

図1.84時間のファスティングによる安静時代謝量の変化

 次に呼吸商についてです。呼吸商とは、吸った酸素の量と、吐いた二酸化炭素の量から求めることができる値です。呼吸商は次の式で求めらます。

 呼吸商 = 二酸化炭素発生量 ÷ 酸素消費量

 この呼吸商で何がわかるのか?。炭水化物・糖質と比較して、タンパク質や脂肪をエネルギーとして使用する際により多くの酸素を必要とします。つまり、タンパク質や脂肪をエネルギーとして使用した場合には酸素消費量が多くなる、呼吸商が小さくなるわけです。栄養素の呼吸商は、炭水化物の呼吸商が1、蛋白質の呼吸商が0.8、脂質の呼吸商が0.7となっています。

 では、実際にファスティングにより呼吸商がどのように変化したのかをみましょう。ファスティング12時間後の呼吸商を基準として、36時間後、60時間後、84時間後で呼吸商を測定しました。図2の結果のように、呼吸商は36時間後、60時間後、84時間後のいずれでも減少していました。この結果の解釈については、次の②の論文の際に一緒に考えてみます。

図2.84時間のファスティングによる呼吸商の変化

1日おきのファスティングで代謝量はどうなった?

:Alternate-day fasting in nonobese subjects: effects on body weight, body composition, and energy metabolism

 平均年34歳、平均BMI25.3の男性8人、平均年齢30歳、平均BMI22.6の女性8人を対象に実験を行いました。1日おきに24時間のファスティングをする方法を22日間行いました。実験開始時のファスティング12時間後のベースライン、1日おきのファスティングを行って21日後(ファスティング12時間後)、1日おきのファスティングを行って22日後(最後のみ不ファスティング36時間後)に代謝量を測定しました。

 22日後に体重は2.5%、脂肪量は4%減少しました。安静時代謝量は図3のように、ベースラインと比較して、21日後でも、22日後でも変化はありませんでした。1日おきのファスティングを約3週間しても安静時の代謝量は落ちなかったわけです。

図3.1日おきのファスティングによる安静時代謝量の変化

 次に呼吸商をみてみます。図4に示すようにベースラインと比較して、ファスティング12時間後の21日後に呼吸商に変化はありませんでした。一方で、ファスティング36時間後の22日には呼吸商が0.79と減少していました。図2にしめしたように、84時間のファスティングの実験でも36時間以降、呼吸商は減少していましたね。どちらの研究もファスティング36時間以降に呼吸商が減少しているわけです。

図4.1日おきのファスティングによる呼吸商の変化

 人数こそ少ないですが、約3.5日間のファスティングと、22日間の1日おきのファスティングの研究をみてみました。

 ファスティングで安静時代謝量は変化しない、または増える

 36時間以上のファスティングで呼吸商が低下する

 この2つがポイントとして挙げられます。ファスティングをしても、代謝量は落ちないんです。また、36時間以上のファスティングをすると炭水化物・糖質をエネルギー源とする代謝から、脂肪をエネルギー源とする代謝に切り替わります。これが、エネルギー源が糖質から脂肪に切り替わる代謝スイッチです。脂肪を代謝する場合には、より多くの酸素が必要となるため呼吸商が低下します。2つの研究では、ファスティング36時間以降で呼吸商が低下しており、エネルギー源が炭水化物・糖質から脂肪にスイッチしたことを示しています。代謝スイッチをonにするために、脂肪をより燃やすために、ファスティングが勧められる理由の1つです。

 健康資産は、全ての人が毎日運用している資産です。食事資産、睡眠資産、運動資産、マインド資産の4つの資産より成り立っている資産です。どれか一つの資産にでも負債をかかえると、健康資産のバランスが崩れます。日々の生活の中で、意識的に、そして正しく健康資産を運用しませんか。全ての人が毎日運用している健康資産。意識的に正しく運用し、人生の最大化を図りましょう。ドクレイでした。それではまた。