よくある病気について

悪性腫瘍、がん、がん検診

chemotherapy

 こんにちは、ドクレイです。以前に森勇麿先生の『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』の本を読ませていただきました。その中で、がんを3つに分けて考える、ということが非常にわかりやすいと感じました。がん検診という観点からも、すこしまとめてみたいと思います。

がんと癌について

 まずは、がんと癌について説明しておきます。個人的な感想として、テレビやインターネットなど一般向けの情報の場合は「がん」と表記され、医学書など専門家向けの情報の場合は「癌」と表記されていることが多いように思います。しかし、実際には下記のように区別されているようです。

ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全体を示す。

漢字の「癌」は上皮細胞(体の外とつながっている臓器)から発生する悪性腫瘍を示す。

ですが、特に区別しないこともある。

とのことです。ここでは、特に使い分けをせず、「がん」と表記します。

がんの統計

再診がん情報サービス 最新がん統計のまとめ

https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

より、がん統計についてまとめておきます。

 日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性65.0%、女性50.2%で、男性・女性ともに2人に1人が、がんと診断されます。また、日本人ががんで死亡する確率は男性26.7%、女性17.9%で、男性の4人に1人、女性の6人に1人が、がんで亡くなります

 下の図1には、がんの罹患数(りかんすう)と死亡数の順位を示します。罹患数とは、がんと診断された人の人数です死亡数とは、がんが原因で亡くなった人の人数です

図1.がんの罹患数と死亡数の順位

 ここで注目しておきたいことを何点かピックアップしておきます

・胃がん、大腸がん、肺がんの3つのがんは、男女ともに、そして、罹患数・死亡数ともに5位以内に入っている。

・肝臓がんは男性に多く、乳がんは女性に多い。

・男性において罹患数の最も多い前立腺がんは、死亡数の5位以内に入っていない。

・膵臓がんは、罹患数にはランクインしていないが、死亡数の順位において男性4位、女性3位に入っている。

がんを3つに分ける

 がんには多くの種類があります。それこそ、ここで全てのがんを挙げて説明をしたら、キリがありません。ここでは、森勇麿先生の本を参考にして、肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がんをピックアップしていきます。がんを次の3種類に分けます。①予防できるがん、②早期発見・早期治療ができるがん、③予防も早期発見も難しいがん、の3種類です

①予防できるがん

 がんなのに予防できるの?。そう思われる方も多いと思います。しかし、がんの原因が明らかであれば、その原因を取り除くことができれば、がんを予防できるんです。予防できるがん、それは胃がん、肝臓がん、子宮頚がんです。胃がん、肝臓がん、子宮頸がんの原因は、大部分が明らかになっています。胃がんの原因の多くは、ピロリ菌です。肝臓がんの原因の多くは、肝炎ウイルス(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス)です。子宮頚がんの多くは、ヒトパピローマウイルス(HPV)です。

 ピロリ菌が陽性であれば、除菌療法をすることができます(3種類の薬を1日2回、1週間内服します)。B型肝炎ウイルスが陽性であれば、B型肝炎ウイルスを抑える治療ができます(残念ならB型肝炎ウイルスを除去する治療は、現在もありません)。C型肝炎ウイルスが陽性であれば、飲み薬を2~3ヶ月内服して治療することができます。ヒトパピローマウイルス(HPV)については、感染を予防するワクチンがあります。子宮頚癌ワクチンについては、厚生労働省のリンクを貼っておきます(厚生労働省 ヒトパピローマウイルス感染症:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html

  肝臓がんについては、ここで少し補足をしておきます。肝臓がんは、これまでは肝炎ウイルスが原因であることがほとんどでした。輸血により肝炎ウイルスに感染してしまった。注射針の使い回しにより肝炎ウイルスに感染してしまった。このような事例が多かったわけです。現在は輸血や、針の使い回しによる感染は、ほとんどありませんので、肝炎ウイルスによる肝臓がん自体が減っています。肝炎ウイルスが原因の肝臓がんは上記の対応をすることで予防することができます。しかし、現在は肝炎ウイルスが原因ではない肝臓がん増えていることが問題になっています。その原因は、アルコールと生活習慣病です。お酒が肝臓を悪くすることは昔から知られています。一方で肥満や糖尿病があっても肝臓を悪くすることがあります。それが、お酒を飲まない人の脂肪肝、非アルコール性脂肪肝です。非アルコール性脂肪肝とは、人間の肝臓がフォアグラになってしまうことです。フォアグラは、カモやダチョウに餌を強制的に食べせる(強制給餌)ことで、作り上げたものです。興味がある方は次のリンク先を訪れてみてください(日本消化器病学会ガイドライン:https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/nafld.html)。

②早期発見、早期治療ができるがん

 がんを小さいうちに発見することができれば、早い段階で治療することができます。早期発見・早期治療ができるがんは、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、前立腺がんです。胃がん、大腸がん、肺がんは、図1を見ていただくとわかるように男女ともに罹患数、死亡数ともに5位以内に入っています。胃がん、大腸がん、肺がんを早期発見・早期治療することが重要であることは言わなくてもわかっていただけると思います。

 胃がんは、男性で罹患数3位、死亡数2位、女性で罹患数4位、死亡数5位です。胃がんの多くの原因がピロリ菌と考えられています。ピロリ菌が陽性の場合には積極的に除菌療法が勧められます。ピロリ菌を除菌することで胃がんの発生を予防することができると考えられます。しかし、ピロリ菌を除菌をした後でも胃がんが発生するリスクはありますから、担当の先生と相談して内視鏡検査などを定期的受診するようにしてください。内視鏡検査を受けることにより胃がんを早期に発見できます。つまり、早期発見・早期治療ができるわけです。50歳以上の方は、がん検診でバリウム検査または内視鏡検査が2年に1回受診できますので利用するのもありですが、個人的には早い段階でピロリ菌の検査をして、ピロリ菌がいるかいないかを知っておくのがベストだと思います。ピロリ菌が陰性の場合には、定期的な内視鏡検査は必要ないと私は考えています。

 大腸がんは、男性で罹患数2位、死亡数3位、女性で罹患数2位、死亡数1位のがんです。がん検診で40歳以上の方は毎年便潜血反応検査を受診することができます。男女ともに罹患数、死亡数ともに多いのが大腸がんですから、積極的にがん検診を利用してほしいです。便潜血反応検査が陽性の場合は大腸内視鏡検査が勧められます。大腸内視鏡検査で早期に大腸がんを発見することができれば、内視鏡的治療または、外科的手術による根治治療ができます。つまり、早期発見・早期治療ができるわけです。大腸内視鏡検査は決して楽な検査ではありませんが、現在は鎮静薬(眠くなる薬)や鎮静薬(痛み止めの薬)を使用しながら、検査をしてくれる病院やクリニックも増えているので、是非利用していただきたいです。5~10年に1回は大腸カメラを検討してはいかがでしょうか。

 肺がんは、男性で罹患数4位、死亡数1位、女性で罹患数3位、死亡数2位のがんです。40歳以上の方は、がん検診で胸部エックス線検査(つまりはレントゲンですね)を受けることができます。日本ではがん検診として行われている胸部エックス線検査ですが、米国では肺がんの検診目的に胸部エックス線検査を行っていません。その理由は胸部エックス線では、肺がんの早期発見が難しいからです。ですので、タバコを吸っている方や吸っていた方に対して、定期的なCT検査を勧めることがあります。対象となる方は、喫煙指数(本数×年)が600以上の方です。例えば、1日20本を30年吸っていると、20×30=600となります。胃がんや大腸がんと比較すると、肺がんは早期発見が難しいがんであると思います。胃がん、大腸がんにおいては内視鏡検査がありますが、肺がんにおいては胸部エックス線しかないからです。CTは被爆の問題もあり、ややハードルが高い検査と言わざるを得ません。喫煙指数が600以上の方は、是非定期的なCT検査を検討してください。

 乳がんは、女性で罹患数1位、死亡数4位のがんです。40歳以上の女性は、がん検診で2年に1回のマンモグラフィー検査を受診することができます。前立腺がんは、男性で罹患数1位、死亡数は圏外のがんです。50歳以上の男性は、年に1回PSA(前立腺がんの腫瘍マーカー)の検査を受診することができます。

③予防・早期発見が難しいがん

 予防も、早期発見も難しいがん、それが膵臓がんです。膵臓がんは罹患数自体は多くはないものの、男性で死亡数が4位、女性で死亡数が3位のがんです。つまり、膵臓がんになる人は多くはないが、膵臓がんで亡くなる患者さんは多い、というわけです。もちろん、専門家の先生たちが、膵臓がんを早期発見、早期治療ができるようにと、採血検査や画像検査の開発に取り組んでいます。しかし、現在もなお膵臓がんは早期発見・早期治療が難しいがんに君臨しています。そしてもちろん、膵臓がんは、がん検診の対象にはなっていません。

 がん検診について、厚労省のホームページのURLを添付しておきます

(厚生労働省 がん検診 URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html)。

 今回は悪性腫瘍、がん、がん検診についてまとめました。胃がん、大腸がん、肺がん、肝臓がん、乳がん、前立腺癌、膵臓がんという、とりわけ有名ながんを、①予防できるがん、②早期発見・早期治療できるがん、③早期発見・早期治療が難しいがん、の3つに分けてまとめました。

 健康資産は、全ての人が毎日運用している資産です。食事資産、睡眠資産、運動資産、マインド資産の4つの資産より成り立っている資産です。どれか一つの資産にでも負債をかかえると、健康資産のバランスが崩れます。日々の生活の中で、意識的に、そして正しく健康資産を運用しませんか。全ての人が毎日運用している健康資産。意識的に正しく運用し、人生の最大化を図りましょう。ドクレイでした。それではまた。