こんにちは。ドクレイです。前回、肥満の本当の原因について説明しました。肥満の本当の原因は次の２つです。『インスリンの出過ぎ＝高インスリン血症』、『インスリンへの慣れ＝インスリン抵抗性』。
この２つには、「インスリン」という言葉が共通しています。では、インスリンとは何のか。高インスリン血症とは、インスリン抵抗性とは。これらのことを順番に解説していきます。インスリンや高インスリン血症などを理解するためには、まず体におけるエネルギーの流れを理解することが必要です。今回はエネルギーの流れと、インスリンについて説明していきます。
エネルギーの流れ～お金とブドウ糖～
図１：お金は、買い物に使います。手元に残っているお金は、すぐに使えるように財布にしまっておきます。
図２：次は体の中で考えてみます。ヒトにとって主なエネルギーはブドウ糖ですので、ブドウ糖をお金として考えてみます。
ブドウ糖（お金）は、エネルギー（買い物）に使います。残っているブドウ糖ははどうなるでしょうか。お金はすぐに使えるように財布にしまいました。ブドウ糖はすぐに使えるように肝臓に貯蔵します。肝臓に貯蔵する際に、ブドウ糖はグリコーゲン（貯蔵糖）という形になります。グリコーゲンはブドウ糖がたくさん繋がった出来上がったもので、すぐにブドウ糖として取り出すことができます。グリコーゲンはすぐにブドウ糖として使えるので便利です。財布からのお金の出し入れが簡単なのと同じです。
図３：今度はお金がたくさんある場合を考えます。お金は買い物に使います。余ったお金は財布にしまいます。ですが、お金はたくさんあるので、財布にも入りきりません。その場合、お金は銀行に預けます。
図４：同じように体の中でブドウ糖がたくさんある場合を考えます。ブドウ糖はエネルギーとして使います。余ったブドウ糖はグリコーゲンとして肝臓に貯蔵されます。しかし、残念ながら肝臓もたくさんのグリコーゲンを蓄えることはできません。入りきならいお金を銀行に預けるように、肝臓に入り切らないブドウ糖も肝臓以外の場所に貯蔵する必要があります。それが内蔵脂肪です。ただし、ブドウ糖という形ではなく、ブドウ糖を脂肪に変換して内臓脂肪に貯蔵します。
この余ったブドウ糖が脂肪に変換されたことを”脂肪新生”と言います。体の脂肪は食べた脂肪から出来上がるのではなく、エネルギーとして使われずに余ったブドウ糖から出来上がっているのです。
インスリン＝血糖値を下げるホルモン、ではない
ブドウ糖をお金、肝臓を財布、内臓脂肪を銀行として、エネルギーの流れを説明してきました。このエネルギーの流れを指揮しているのが、実はインスリンなのです。やっとインスリンが出てきましたね。
インスリンは膵臓（のβ細胞）から分泌されるホルモンです。インスリンは血糖値を下げるホルモンとして有名です。血糖値が高くなったら、糖尿病が悪くなったら、インスリン注射をして血糖値を下げる、このようなイメージではないでしょうか。
図５：インスリンは、ブドウ糖をエネルギーとして使用するために、血管にあるブドウ糖を細胞に取り込みます。血管にあるブドウ糖を細胞に取り込むため、血糖値（血管の中にあるブドウ糖の値）が下がるわけです。ですので、インスリンは血糖値を下げるホルモン、という理解は半分合っています。しかし、ここからが大事です。
図６：インスリンはブドウ糖を細胞に取り込むホルモンですが、他にも２つの重要な働きがあります。上述したように、余ったブドウ糖はグリコーゲンとして肝臓に貯蔵されます。さらに、グリコーゲンがいっぱいになってしまった場合、余ったブドウ糖は脂肪になり、内蔵脂肪に貯蔵されます。ブドウ糖をグリコーゲンとして、脂肪として貯蔵する際にもインスリンが作用しています。つまり、インスリンはブドウ糖を細胞の取り込むだけでなく、グリコーゲンとして肝臓に取り込み、さらには脂肪として体に取り込むホルモンなのです。
インスリンは「ブドウ糖を体に貯め込むホルモン」、「肥満ホルモン」です。
いかがでしたでしょうか。体の中でのエネルギーの流れ、そしてインスリンの働きがどのどのようなものなのかをわかっていただけたでしょうか。インスリンについて理解が深まったところで、次回は高インスリン血症とインスリン抵抗性について説明したいと思います。
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