肥満・メタボリックシンドローム(メタボ)の本当の原因について説明します。肥満・メタボの原因は、”食べ過ぎ”・”運動のしなさ過ぎ”が原因だとういのが通説ですが、これは間違いです。食べる量を減らして、運動する量を増やしても、体重は減らないからです。肥満・メタボの本当の原因は次の2つです。
『インスリンの出過ぎ=高インスリン血症』
『インスリンへの慣れ=インスリン抵抗性』
馴染みのない言葉ですね。多少、難しい内容になりますが、肥満・メタボを薬なしで克服するためには必須の知識です。一緒に勉強していきましょう。
メタボリックドミノについて
図1:まずはメタボリックドミノという考え方を紹介します。ドミノ倒しの出発点である肥満のドミノが倒れると高血圧や脂質異常、高血糖になる。また、これらのドミノが倒れると、脂肪肝になり、糖尿病になる。そして、どんどんと病気のドミノは倒れていき、最終的に心筋梗塞や脳卒中、認知症になる。これがメタボリックドミノです。
メタボリックドミノの出発点は、上図の赤枠のように肥満です。では、肥満の原因は何か。肥満の原因は生活習慣の乱れです。この生活習慣の乱れ=”食べ過ぎ”・”運動のしなさ過ぎ”とされてきました。医療者は何十年も次のように指導してきたし、患者さんもその指導を守ってきたわけです。その指導内容とは、
「食べすぎに注意しよう。」
「もっと運動をしよう。」
この2つです。肥満やメタボを指摘され、病院を受診した際に絶対に言われる言葉だと思います。でも、この指導で体重は減ったのでしょうか。これで血圧が下がったでしょうか。これでコレステロールは減ったでしょうか。これで血糖値は下がったでしょうか。答えは全て『ノー』です。
7年の大規模研究で分かったこと
図2:2006年に海外で発表された論文を紹介します。平均年齢が62歳、平均BMIが29、約5万人の女性が参加した研究です。
図3:約5万人の女性は、2つのグループに分けられました。1つ目のグループは低カロリー(食べる量を減らす)。2つ目のグループは低カロリー・低脂肪(食べる量を減らす+脂肪の割合を減らす)を指導されました。どちらのグループも運動はするように指導されています(運動量を増やす)。そして、約7.5年間に渡り、この研究が続けられました。
図4:1つ目の低カロリーのグループは、1年後、7.5年後の体重に変化がありませんでした。2つ目の低カロリー・低脂肪のグループは、1年後に約2.2kg痩せました。しかし、7.5年後にはリバウンドしていました。
図5:7.5年間の研究でわかったことは次のことです。食べる量を減らしても、脂肪の割合を減らしても体重は減らない、運動して消費するエネルギーを減らしても体重へ減らない。
重要なのでもう一度繰り返します。
『食べる量を減らしても、体重は減らない。』
『低脂肪食にしても、体重は減らない。』
『適度に運動しても、体重は減らない。』
つまり、”食べ過ぎ”や”運動しなさ過ぎ”では体重は減らないんです。つまり、”食べ過ぎ”や”運動しなさ過ぎ”が肥満の本当の原因ではないんです。
なぜこのように考えられるようになったかというと、カロリーという考え方が一つの原因と言われています。ここではカロリーについての考え方には触れませんが、摂取するカロリーと消費するカロリーという数値だけで太ったり痩せたりを考えることは間違いです。脂肪は1gが9kcalです。オリーブオイル10gとマーガリン10gはどちらも90kcalですが、体に与える影響は全く違います。放牧で飼育された牛の牛肉と、抗生物質の入った穀物で飼育された牛の牛肉では体に与える影響は全く違います。
肥満・メタボの本当の原因
メタボリックドミノの本当の出発点は何か。肥満やメタボの本当の原因は何か。
肥満・メタボの本当の原因は、
『インスリンの出過ぎ=高インスリン血症』
『インスリンへの慣れ=インスリン抵抗性』
この2つです。
次回は、高インスリン血症とインスリン抵抗性が、なぜ肥満の原因となるのかを解説していきます。