医師が沖縄でやっていた夏の健康資産防衛|紫外線・熱中症・脱水対策
こんにちは、やす先生です。
先日、沖縄に行ってきました。前回の記事では食生活の話を書きましたが、今回はもうひとつの主役、暑さと日差しの話です。
滞在中、とにかく暑かった。それは予想どおりだったのですが、印象的だったのは直射日光の下と日陰との差でした。日なたを歩けば汗が止まらないのに、日陰に入った瞬間、体感がまるで違う。本州でも夏の日差しは強いですが、あの「差の大きさ」は亜熱帯ならではだと感じました。
医師として意識していたのは、実は「何を持っていくか」ではありません。「どう動くか」でした。
この記事で分かること。
- 沖縄の夏の日差しは、数字で見るとどれくらい強いのか
- 医師が現地で実際にやっていた暑さ対策(特別な道具は使いません)
- 医師でも日焼けした、正直な失敗談とその教訓
- 症状が出なくても夏に疲れる理由
沖縄の夏は「少し先の本州の夏」かもしれない
まず数字を確認します。
気象庁が那覇で紫外線観測を行っていた時期のデータを見ると、那覇の7月の日最大UVインデックス(月平均)は10前後でした。UVインデックスは紫外線の強さを示す国際的な指標で、世界保健機関(WHO)の区分では8以上が「非常に強い」、11以上が「極端に強い」です。つまり沖縄の真夏の昼は、月の平均値ですでに最上位クラスに達しています。
では本州は安全圏かというと、そうでもありません。同じ気象庁の観測で、つくばの7〜8月も7〜8台。「非常に強い」域に入る日は、本州でも普通にあります。
気温も同じ方向に動いています。全国の猛暑日(最高気温35℃以上)の年間日数は長期的に増え続けており、最近30年の平均は、統計開始当初の30年と比べて約3.9倍になっています。
前回の記事で、沖縄の食生活は「日本全体の先行指標」だと書きました(長寿県・沖縄はなぜ短命化したのか)。夏の暑さについても、構図は似ているのかもしれません。沖縄の夏への向き合い方は、これからの本州の夏の標準装備になっていく。現地を歩きながら、そう考えていました。
医師がやっていたのは「行動の設計」だけ
大げさな見出しをつけましたが、私が現地でやっていたことは、拍子抜けするほど地味です。特別なグッズはほとんど登場しません。
日陰を選んで歩く、こまめに休む
移動するとき、私は日陰を選んで歩き、休憩をこまめに入れていました。それだけです。
ただ、これには理屈があります。熱中症の危険度を測る指標に暑さ指数(WBGT)があります。気温だけでなく、湿度と、日差しからの放射熱を大きく反映した指標です。つまり同じ場所・同じ時刻でも、日なたと日陰では危険度そのものが変わるということです。
冒頭に書いた「日なたと日陰の体感差」は、気のせいではなく、指標の設計にも織り込まれた実体のある差なのです。
一番危ないのは、「目的地まであと少しだから」と炎天下を頑張って歩き切ってしまうことだと思います。休憩は弱さではなく、設計です。
水分は「ちょびちょび飲み」
飲み物は、さんぴん茶など沖縄ならではのものを楽しみつつ、少量ずつ、頻回に飲んでいました。家では「ちょびちょび飲み」と呼んでいます。
これも理屈があります。喉の渇きは、体の水分がすでに減り始めてから現れるサインです。環境省や厚生労働省の熱中症予防の資料でも、「喉が渇く前に、こまめに」という飲み方が繰り返し推奨されています。一気にたくさん飲むより、渇きを感じる前に少しずつ。地味ですが、これが基本形です。
塩分タブレットは使わなかった
意外に思われるかもしれませんが、私は塩分の補給を特に意識しませんでした。
理由は単純で、現地の食事を「塩気が多めだな」と感じていたからです。食事がしっかり摂れているなら、塩分はそこで十分に入ってくる、という判断でした。
これは沖縄に限った話ではありません。国民健康・栄養調査によると、日本人の食塩摂取量は平均でおよそ10g/日。目標量(男性7.5g未満・女性6.5g未満)を大きく超えています。つまり私たちの多くは、夏でも「塩分が足りない」状態には、そもそもなりにくいのです。
塩分の追加補給が意味を持つのは、炎天下での長時間の作業や運動で大量に汗をかいたときです。日常の外出や観光の範囲であれば、普段の食事で足りていることが多い。「夏=塩分補給」と反射的に考える前に、自分がどれだけ汗をかいたかを一度考えてみてください。
※高血圧などで減塩指導を受けている方は、自己判断で塩分を増やす前に主治医に相談してください。
医師でも焼けた — 紫外線対策の失敗談
さて、ここからが今回一番書きたかった話です。
私は日焼け止めを塗り、サングラスをかけて過ごしていました。対策としては悪くないはずです。
それでも、焼けました。足の甲です。
敗因ははっきりしています。ふたつありました。
ひとつめ。足の甲は「塗り忘れの定番部位」でした。顔や腕には塗るのに、サンダルで露出した足の甲は忘れる。耳や首の後ろも同じく忘れやすい部位です。私は医師として患者さんに紫外線の話をする立場ですが、自分の足の甲は守れていませんでした。
ふたつめ。塗り直しをしませんでした。朝に1回塗って、そのままです。日焼け止めは汗や皮脂で流れ落ちるため、2〜3時間おきの塗り直しが一般に推奨されています。汗をかいたり、水に濡れてタオルで拭いたりしたら、その都度塗り直しが必要です。「朝塗ったからOK」は、少なくとも真夏の屋外では成立しませんでした。
サングラスのほうは、素直におすすめできます。紫外線は目にも影響し、白内障や翼状片、角膜の炎症との関連が指摘されています。ここで知っておいてほしいのは、紫外線カットの効果はレンズの色の濃さとは関係がないことです。UVカット機能があれば、色の薄いレンズでも目を守れます。濃い色のレンズがまぶしさ対策になる一方で、選ぶ基準はあくまで「UVカット表示」です。
症状が出なくても、暑さは消耗させる
結果として、私も家族も、頭痛やめまいといった熱中症を思わせる症状は出ませんでした。日陰と休憩、ちょびちょび飲み。行動の設計は、ひとまず機能したのだと思います。
ただ、それでも感じたことがあります。いつもと違う疲労感です。特別に無理をしたわけでもないのに、一日の終わりに、普段とは質の違う疲れがありました(充実感でもあったのですが)。
これは医学的には自然なことです。暑い環境では、体は体温を一定に保つために汗をかき、皮膚の血流を増やし、常に「冷却運転」を続けています。何もしていなくても、体温調節そのものがエネルギーを使っているのです。
だから、夏は「症状が出ていない=ノーダメージ」ではありません。消耗している前提で、休養を意識的に増やすのが理にかなっています。私たちのフレームで言えば、夏は睡眠資産の積み増しが必要な季節です(睡眠と体重の関係は太ります!寝不足でも寝すぎでも。でも書いています)。
まとめ — 夏の防衛は「行動設計」が本体
沖縄で私がやっていたことを、そのままチェックリストにします。特別な買い物は、ほぼ要りません。
- 移動は日陰で設計する。日なたと日陰では、暑さ指数レベルで危険度が違う
- 休憩は弱さではなく設計。「あと少し」で頑張らない
- 水分は少量頻回。喉が渇く前に、ちょびちょび飲む
- 塩分の追加は大量発汗時だけ。普段の食事で足りていることが多い
- 日焼け止めは塗り直してこそ。2〜3時間おき、汗のあとは都度。足の甲・耳・首の後ろを忘れない
- サングラスは「UVカット表示」で選ぶ。色の濃さは関係ない
- 症状がなくても消耗している前提で、睡眠を増やす
健康資産の防衛は、何かを買い足すことではなく、今日の動き方を少し変えることから始まります。
沖縄の強い日差しの下で確認できたのは、結局その基本形でした。そしてその基本形は、年々暑くなる本州の夏でも、そのまま使えるはずです。
やす先生でした。それではまた。
【参考文献】
- 気象庁「日最大UVインデックス(観測値)の月平均値」(つくば・那覇)
- 世界保健機関(WHO)”Global Solar UV Index: A Practical Guide”(UVインデックスの区分)
- 気象庁「気候変動監視レポート」(猛暑日の長期変化傾向)
- 環境省「熱中症予防情報サイト」暑さ指数(WBGT)について https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル2018」(水分補給・日常生活での注意事項)
- 厚生労働省「国民健康・栄養調査」(食塩摂取量)/「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(食塩の目標量)
- 環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」(日焼け止めの塗り直し・目の紫外線障害・UVカットレンズ) https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf
