こんにちは。やす先生です。

 「65歳になって、肺炎球菌ワクチンの案内が届いたんだけど、どうすればいい?」親御さんにそう聞かれたら、答えられるでしょうか。

 肺炎球菌ワクチンは、2026年4月に定期接種で使う種類が変わりました。ネットには、以前の情報もまだ多く残っています。効果の数字も、種類の違うものが混ざって語られがちです。今回は、制度の変更点と数字の読み方、接種歴に応じた選び方を整理します。

  • 2026年4月に何が変わったのか
  • 予防効果を示す3種類の数字の読み方
  • 接種歴に応じた選び方と、定期接種の落とし穴

 はじめにお伝えしたいことです。この記事は一般的な情報をまとめたものです。持病のある方や治療中の方は、かかりつけ医に相談してください。制度の細かい点は市区町村によって異なります。

2026年4月に何が変わったのか

 定期接種とは、法律に基づいて市区町村が実施する予防接種です。高齢者の肺炎球菌ワクチンでは、使うワクチンが次のように変わりました。「20価」は、20種類の型の肺炎球菌を対象にしたワクチンという意味です。

2026年3月まで2026年4月から
ワクチン23価(PPSV23・商品名ニューモバックス)20価(PCV20・商品名プレベナー20)
定期接種の回数1回1回
打ち方筋肉内または皮下筋肉内
対象者65歳の方など変更なし

 対象の「65歳の方など」には、60〜64歳で、心臓・腎臓・呼吸器の機能やHIVによる免疫の機能に重い障害があり、日常生活が極度に制限される方も含まれます。

 注意したい点が2つあります。

 1つ目は案内の表記です。東京都目黒区の案内には、予診票に「ニューモバックス」と印字されていても、2026年4月以降はプレベナー20を使うと書かれています。案内の名前だけで判断せず、お住まいの市区町村に確認すると安心です。自己負担も市区町村ごとに異なり、目黒区では4,000円から5,000円になりました。

 2つ目は「5年ごとに打ち直す」という以前の情報です。現在の学会の考え方では、23価ワクチンを同じワクチンで打ち直すことは、原則として選択肢にしていません。

肺炎球菌はなぜ軽視できないのか

 2025年の日本の死因では、肺炎が第5位(84,021人)、誤嚥性肺炎が第6位(64,396人)でした。肺炎球菌は、肺炎の原因のひとつです。国内の地域住民を対象にした研究では、成人の市中肺炎(普段の生活の中でかかる肺炎)の17.8%で肺炎球菌が検出されています。

 肺炎だけではありません。血液や髄液など、本来は菌がいない場所に菌が入る重い感染症を起こすことがあります。侵襲性肺炎球菌感染症と呼ばれるもので、この記事では「重い感染症」と書きます。国内の調査では、成人の患者の約7割を65歳以上が占めていました。

 なお、誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液が気管に入ることなどで起こる肺炎です。飲み込む力への対策が別に必要になるため、今回のワクチンの話とは分けて考えてください。

予防効果の数字は3種類ある

 ワクチンの効果として語られる数字には、意味の違うものが混ざっています。ここを分けると、期待できる範囲が見えてきます。

数字の種類意味報告されている数字
① カバー率実際に病気を起こした菌のうち、ワクチンの対象に入る割合65歳以上の重い感染症で、20価は50%、21価は78%(国内・2022〜24年)
② 対象の菌への効果ワクチンの対象の型による病気をどれだけ減らしたか13価で、肺炎45.6%、重い感染症75.0%(CAPiTA試験)
③ 全体への効果原因を問わず、病気全体をどれだけ減らしたか13価で、肺炎全体5.1%・統計的な差なし(CAPiTA試験)
20価で、肺炎全体15.2%、重い感染症25.6%(米国の調査)

① カバー率は「的の広さ」

 カバー率は、ワクチンがどれだけ広い範囲の型を対象にしているかを示します。予防効果そのものではありません。カバー率が78%だから78%予防できる、という意味ではないのです。

② 大規模試験でわかったこと

 オランダのCAPiTA試験では、65歳以上の8万4千人あまりをワクチンと偽薬に分けて、平均約4年間追跡しました。今の20価より前の、13価ワクチンの試験です。免疫の働きが保たれている人を対象にしています。

 対象の型による肺炎は、偽薬の群で90人、ワクチンの群で49人でした。重い感染症は28人と7人です。割合だけでなく人数も見ると、どちらの群でも発症した人は多くないことがわかります。「45.6%減」という数字は、この人数の差から計算されたものです。

③ 全体で見ると、数字は小さくなる

 読者のみなさんが本当に知りたいのは、おそらくここでしょう。同じCAPiTA試験でも、原因を問わない肺炎全体では787人と747人で、はっきりした差はつきませんでした。肺炎の原因は、肺炎球菌以外にもたくさんあるからです。

 20価ワクチンについては、米国の65歳以上の約1,650万人の医療データを調べた研究があります。肺炎全体で15.2%、重い感染症全体で25.6%少ないという結果でした。65〜74歳に限ると、それぞれ20.2%と35.4%です。厚生労働省も、血清型によらない重い感染症全体の3〜4割程度を予防する効果があるという研究結果を紹介しています。

 ただし、この米国の研究は、実際の接種の有無を後から比べた調査です。ワクチンを打つ人はもともと健康への意識が高いなど、計算で調整しきれない差が残っている可能性があります。CAPiTA試験も米国の調査も、ワクチンの製造元であるファイザー社がスポンサーです。また、どちらも海外の結果で、日本とは流行している菌の型が異なる可能性もあります。

では、どう考えるか

 「打てば肺炎にならない」わけではありません。肺炎全体を減らす効果は研究によって幅があり、期待しすぎない方がよいと思います。一方で、命に関わることもある重い感染症のリスクを下げる手段としては、意味があると考えています。

 タイミングも大切です。CAPiTA試験を後から分析した研究では、予防効果の推定値は65歳での接種で約65%、75歳での接種で約40%でした。あくまで推定で幅のある数字ですが、高齢になるほど効果が下がる傾向は、国の審議会の資料でも挙げられています。

 投資でいえば、大きく増やすためのものではなく、大きな損失の確率を下げるための備えに近いでしょう。確率はゼロにはなりません。それでも、公費の補助が受けられる65歳の1回は、逃さずに検討してほしいと思います。

接種歴に応じた選び方

今の状況主な選択肢
未接種で、定期接種の対象(65歳など)定期接種の20価
未接種で、66歳以上任意接種(原則自費)の20価または21価。15価のあとに23価を打つ方法もある
23価、13価、15価、20価のいずれかを接種済み1年以上あけて、20価または21価を接種できる。過去に定期接種で23価を受けた方は、原則として定期接種の対象外
糖尿病、慢性の肺・心臓・肝臓の病気がある方、がんや免疫を抑える治療を受けている方年齢にかかわらず、接種する種類と時期を主治医に相談

落とし穴:定期接種の期間は短い

 定期接種の期間は限られています。目黒区の例では、65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までです。過ぎると補助は受けられません。今回の切り替えでは、65歳を超える方への経過措置(補助の対象を広げる特例)は設けられていません。21価を定期接種にする検討の中で、あらためて議論されることになっています。

 また、過去に自費で接種した方の扱いは、市区町村によって異なる可能性があります。目黒区では、自費で受けたことがある方は補助の対象外です。64歳のうちに急いで自費で打つ前に、お住まいの市区町村へ確認してください。

20価と21価はどう考えるか

 21価(PCV21・商品名キャップバックス)は、2025年8月に承認されたワクチンです。カバー率は21価の方が高く、前述のとおり重い感染症で78%と50%の差があります。一方で、対象の型は全く同じではありません。20価には含まれて21価には含まれない型が、重い感染症の約8%を占めるとされています。

 2026年9月17日の国の小委員会では、高齢者に広く使うことに科学的な意義があるとまとめられました。20価を完全に置き換えるのではなく、両方を併存させる方向です。ただ、定期接種にするかどうかや開始時期は、この後の議論で決まります。2026年11月時点では、決定は確認できていません。

 注意したいのは、20価も21価も、承認の根拠が主に免疫の反応を調べた試験だという点です。実際の発症をどれだけ減らすかを直接比べた大規模な試験は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。カバー率の差が、そのまま予防効果の差になるとは言えません。

 そこで、65歳の方は、まず定期接種を基本に考えるのがよいと思います。定期接種の期間が過ぎた方や、より広い型を対象にしたい方は、21価も選択肢になります。費用は医療機関ごとに異なるので、かかりつけ医に相談してみてください。

副反応と、受けられない人

 20価ワクチンで報告されている主な副反応は、次のとおりです。臨床試験では、多くが軽度から中等度でした。

  • 接種した部位の痛み:59.6%
  • 筋肉痛:38.2%
  • 疲労:30.3%
  • 頭痛:21.7%
  • 関節痛:11.6%

 まれですが重いものとして、ショック・アナフィラキシー、けいれん、免疫性血小板減少症が記載されています。接種のあとに、息苦しさや全身のじんましん、あざ、鼻血が止まりにくいなどの症状があれば、すぐに受診してください。

 このワクチンの成分やジフテリアトキソイドでアナフィラキシーを起こしたことがある方は、接種を受けられません。発熱している方や、重い急性の病気にかかっている方は、治ってから相談しましょう。インフルエンザなど他のワクチンとの同時接種は、医師が必要と認めた場合に可能とされています。

今日できる3つのこと

  • 親御さんとご自身の接種歴(ワクチンの名前と時期)を確認して、記録しておく
  • 親御さんが64〜65歳なら、市区町村の案内で期間と自己負担を確認する
  • 持病がある方は、次の受診のときに主治医に聞いてみる

 予防医学全般に興味のある方は、『40歳からの予防医学』の要約と感想もご覧ください。

まとめ

  • 2026年4月から、定期接種のワクチンは23価から20価に変わった
  • カバー率、対象の菌への効果、全体への効果は別の数字。「打てば肺炎にならない」わけではないが、重い感染症のリスクを下げる手段として意味がある
  • 定期接種の期間は短い。接種歴を確認して、65歳の1回を逃さないように検討する
  • 21価の定期接種化は議論が進んでいる。最終的な判断はかかりつけ医と相談を

 健康資産は、全ての人が毎日運用している資産です。食事資産、睡眠資産、運動資産、マインド資産の4つの資産より成り立っている資産です。どれか一つの資産にでも負債をかかえると、健康資産のバランスが崩れます。日々の生活の中で、意識的に、そして正しく健康資産を運用しませんか。やす先生でした。それではまた。

【参考文献】
・日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会 合同委員会「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方」第8版(2026年7月15日一部修正)
・厚生労働省「高齢者の肺炎球菌ワクチン」(Q&A 2026年2月20日版)
・厚生労働省「令和7年人口動態統計(確定数)」
・プレベナー20水性懸濁注 添付文書(2026年8月改訂 第3版)
・厚生科学審議会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会 第36回議事録(2026年9月17日)
・厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 第64回資料1-2(2026年2月12日)
・目黒区「高齢者用肺炎球菌予防接種」
・Bonten MJ, et al. N Engl J Med. 2015;372(12):1114-1125.
・van Werkhoven CH, et al. Clin Infect Dis. 2015;61(12):1835-1838.
・Miles AC, et al. Lancet Infect Dis. 2026. doi:10.1016/S1473-3099(26)00115-5
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